今回は、筆者が顧問をしているJAバンク大阪のセミナーで、櫻井よしこ氏の話が良かったのでご紹介します。
- 危機はチャンスにも成り得ると考えることで日本の力を発揮できると考えている。
なぜならば、日本には次の3つがあるからである。
①この金融危機のなかで、実は、世界中で日本が一番お金持ちである。
アメリカの財政赤字は、1990年からの終わりなき栄光の10年間で、世界中からお金を集めた。つまり国外から借金をして出来たものである。日本・中国が買った米国債は、実に全体の1/3である。
一方、日本の財政赤字は800兆円ともいわれているが、日本のご家庭でも日本国債を買っていることでお分かりのように、アメリカと違って、日本国民、つまり日本国内から借金したものである。日本の家庭の金融資産は1500兆円は、健全なお金である。
米中の家庭にお金は無い。彼らは、借金をして物を買う国民性だからである。世界の政府系金融ファンドのお金を集めても、300兆円にしかならない。1500兆円の真面目なお金を持っているのは世界中で日本だけである。日本はもっと自信を持とうではないか。
②日本の技術は世界一である。
原子力発電所を作る技術しかり、各分野において世界一が沢山ある。
③心がある。倫理があるのは日本だけである。
地味な仕事をコツコツと続け、いつか実を結ぶという労働倫理があるのは、世界で日本だけである。今まではアメリカ型がすばらしいとか、欧米制度がいいと日本は外国について行ったが、今や大きな修正をする時がきた。過去において日本は制度設計に加わってきていない。ただ、決められたことに従ってきただけである。
日本の制度ならばこうやる、日本流にこうするんだ、日本は世界に向けてもっともっと発言すべきである。だれも発言しないので私はこの度「国家基本問題研究所」というシンクタンクを立ち上げた。日本流にこうするんだと世界に発言することで、日本人はもっと落ち着いた生活を送ることができるはずだ。
- 次に安全保障問題について話します。
現在、大統領選挙中だが、民主党オバマ氏は、アジア政策を見直すと言っており、その中心は中国である。共和党ライス氏も、6カ国協議で中国を重要視している。相対的に地位が下がるのが日本である。
米中が接近した時、日本は必ず煮え湯を飲まされてきた。これは歴史が物語っている。
北朝鮮に3つから10個あるといわれている核ミサイルは全て、日本に向けられている。その後ろにいたのは中国である。
- このような状況下で、日本はどうあるべきか?
日本は、マネーゲームは下手だ。いつも日本は置いてけ堀を食らっている。
アメリカは、日本は何もしない国だ、中国はすると言ったらことはする国だと思っている。日本は黙って金を出しておればいいと思っている。
そこで日本は、世界に日本モデルを提唱すべきである。日本は、アメリカに日本侮り難しと思わせなければならない。日本は信頼するに値する国と思わせるべきである。日本には、健全なお金・技術・そして倫理がある。
日本の素晴らしさは歴史が物語っている。ペリー来航時、ぺリーは、「日本人は微笑みを浮かべて働いている」と言い、総領事ハリスは、「人民の真の幸福はここにある。生活は貧しいが、気品がある」と言った。
日本は、国民一人一人を大切にしてきた国である。
日本は、いまこそ国益をきちんと主張し、人類に貢献すべきである。
危機はチャンスにも成り得ると、逆転の発想をもって、日本の力を発揮できると考えている。
サブプライム問題で世界経済が揺れている。前回にも述べたように8月下旬に久しぶりにハワイへ行ったが、ワイキキの浜辺の人の少なさに驚いた。昨年に比べて観光客が半減しており、特にアメリカ本土からの客が激減しているそうだ。こんな中で日本経済の今後の行方について述べてみたいと思います。
- ドルの急激な低下で今まで日本経済を支えてきた輸出産業に陰りが見えている。
- 中国、ロシア、ブラジル、インド等の新興工業国の急速な台頭で石油、鉄、レアメタル等の鉱資源の値上がりに加えて我々の生活に必要な食料品等の価格の上昇が続いている。
- その結果、石油、原材料等のアップは「川上インフレ」と呼ばれ、サブプライムによる景気悪化と急激な需要の冷え込みは「川下デフレ」と呼ばれている。
- 大企業は実に4割の企業が実質無借金経営をしているが、中小企業の内部留保は年々細くなりつつあり、不況の抵抗力が弱くなっている。結果としてかつては70万社、5年前には55万社だった製造業は、今や46万社にまで減っている。
- その主因は、過度のコストダウン競争にある。これまでは人件費の部分は大手企業で見てくれていたが、最近は労務費を無視して価格だけを叩いてくるようになったからだ。
株主(株価)第一主義で短期の業績主義、利益配当主義が横行しているためである。 - アメリカの場合、借り手責任としては購入した家を却してしまえばすべて貸し手にツケがまわってくる。日本ではバブルのツケを清算するのに10年以上の月日を要した。そこまでいかなくても少なくともこの巨大な負の清算には早くて3年、通常5年はかかるというのが専門家の診断である。
- 麻生内閣が発足して財政政策を実施するようであるが、この種は小渕さんの時に効果は一時的で多額の借金を後世に残すことになった。小手先の人気取り政策をやめて、次の時代を担う産業の育成にもっともっと注力すべきである。このままだと本当に日本は失速する可能性が高いといえる。日本は金融機関が米国ほどの痛手を被っていないので、サブプライムの影響をさほど受けないとの見方もあるが、私はむしろ輸出産業への影響はこれからだと考えている。
したがってサブプライム問題は、今からが本格的なスタートを切ると考えた方がよい。「備えあれば憂いなし」、これから本格的な不況に突入すると考え「最悪を考え、楽観的に行動する」ことをお勧めする。
平成20年度の税制改正要綱において、21年度の税制改正に「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度を創設する」(いわゆる事業承継税制)とされていますが、加えて「相続税の課税方式を遺産取得課税方式に改めることを検討する」となっています。今回は「遺産取得課税方式」についてその内容と導入の背景を述べてみたいと思います。
- 相続税の課税方式の類型として①遺産それ自体に相続税率を課税する「遺産課税方式」(採用アメリカ、イギリス)、②遺産を取得した相続人に相続税を課税する「遺産取得課税方式」(採用ドイツ、フランス)とさらに、③両方式の長所を採り入れた併用方式の三つがあり、現在日本は③の「併用方式」を採用しています。
- 併用方式は、相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって算出し、各人の取得財産額に応じて課税する方式で課税する側にとっては都合の良い方式ですが、次の問題点を持っています。
- 自己が取得した財産だけでなく、他の相続人が取得した全ての財産を把握しなければ税額計算が出来ない。
- 取得した財産の額が同額でも法定相続人の数によって税額が異なる。
- その結果、「争続」等があり全ての財産を把握できない場合は、適正な申告は出来ず、相続人の一人が過少申告した場合には後日の修正申告で他の相続人も過少申告加算税が課されるという不合理が生じてくる。
- 個人主義的な考え方が強くなった今の日本社会では、現行の方式と一般国民の感覚とは乖離してきている。相続税は、相続人の経済的価値の取得に対して課税すべきであるという観点から、本来の遺産取得方式に変更すべきだという意見が強くなった。
- 私個人としても、親族が親を扶養しないで公的な施設が老後の面倒を見ている今の日本では、併用方式よりも遺産取得課税方式の方が各々の「担税力に応じた課税」がなされるので良いと思う。但し、遺産分割の仕方によっては、相続人の数の多い人と「格差が生じる欠陥」があるので留意すべきである。
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by seki_soken
| 2008-10-06 00:00
| 税制
8月27日からお客様の結婚式出席のため久しぶりに家内と一緒にハワイに行ってきました。夏休みの終わりとはいえ観光客が少ないのに驚きました。お店を27店舗ほど持っている現地の社長の話ではサブプライムの影響がもろに出てきているそうです。ホテルの稼働率も昨対比で半減しており、従業員のレイオフで対応しているそうです。ニュースではリーマンブラザーズが破綻し、なにやら日本経済の先行きにも暗雲が迫ってきておりますので、ご注意下さい。
- 周知のとおり米国はこの10年間、国際収支の赤字が続いています。その上、戦費の拡大等で財政赤字が拡大し、いわゆる「双子の赤字」が慢性的になっています。
- 片や日本も財政赤字が続き、ついに国債の累積額は773兆円になっています。
- 米国は、輸入を抑えるために「円高ドル安政策」をとると思われます。これによって輸出で何とかやって来た日本の企業も海外売上が大幅に減少します。結果としてトラの子の国際収支もマイナスになる可能性が出て来ました。
- さらに米国が軍事予算削減で軍隊を引き上げるとなると自衛隊だけでは日本を守れません。軍備の増強が不可欠となって、財政に大きく影響して来ます。さらに国民の給与水準は上がらない中でガソリンや食料品価格の上昇が続いています。
- 人生には上り坂と下り坂、そして真坂(まさか)があると言われていますが、ひょっとしたら「金融資産が無価値」になることも考えておく必要があります。むしろこれからサブプライムの影響が出てくると主張している方もおられます。「備えあれば憂いなし」といいます。対策として今は、最悪の事態を考えて事前に準備をしておく時期に入ったと言えます。
専門家の意見を総合すればどうやら、本格的な不況に突入しています。サブプライム問題に端を発し、又、原油価格が上昇を続け、同時に原料高により国民生活に直結する食料品等の値上がりも急ピッチです。これまで日本経済を支えてきた輸出産業も円高のあおりを受けて急ブレーキがかかりました。加えて景気が悪い状況にありながら、日本の政治情勢は不安定なままです。かかる状況の中で盛和塾の稲盛和夫塾長は、不況に向かっていく時の経営者の心得を述べられましたので御紹介をしたいと思います。
- 不況は体質強化の時
春の桜は、冬に寒いほど素晴らしい花を咲かすと言われています。企業は不況を境に体質を強化し、次のステップに備えることで発展していくと檄を飛ばされています。すなわち不況のたびに社員が結束し、一つになって頑張ることで次の飛躍になる「節」が作られていくのです。 - 全員営業せよ
次に不況時には、「全社員がセールスマンになれ」と述べられています。営業や製造は無論として、間接人員も全員が一丸となってアイデアをお客様に提案し、受注に結び付ける時だと言われました。物を売る苦労を共有することで、製造部門と営業部門の融和が図られ、共に気持ちを理解し合うようになる訳です。 - 徹底したコスト削減
不況時には価格競争が激化し、受注単価も数量もみるみる下がって来ます。かかる中で採算を改善するには受注単価の下落以上にコストを下げなければなりません。不況時に安い値段でもより利益を出す体質にしておけば、景気が回復した時には一気に大幅な利益が出るようになります。 - 生産性をキープする
不況で受注が減り、つくるものが減ってくれば少ない仕事を従来通りの人員で生産すれば現場での生産性は下がり、空気もたるんで来ます。故に、必要最小限の人員で緊張感をもって仕事をしてもらうことが肝心です。生産ラインから離れた人々には、営業支援や工場の清掃やメンテナンスをしてもらい好況に戻った時に現場復帰してもらいます。
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by seki_soken
| 2008-09-01 00:00
| 経営