去る2月26日、大阪OMMの東天紅で「100年続く企業づくりを支援 業績向上と人材育成の仕組み」と題した新春セミナーを開催致しました。第一部は「100年永続企業の特徴」を筆者が、第二部は「業績を上げ続けるための人材育成の仕組み」を自創経営創始者の東川先生が講演され、窓の外の雨を跳ね返すような熱気の中、盛況のうちに終えることが出来ました。
今回は、当日の第一部でお話した内容の一部をご紹介したいと思います。
- 日本の企業の統計情報(東京商工リサーチ調べ)
100年以上継続している企業は2.1万社、300年以上続く会社 (江戸時代中期以前に創業) は662社、1000年以上続く会社 (平安時代以前に創業) は71社、1300年以上続く会社 (奈良時代以前に創業) は26社。四天王寺建立に携わった金剛組が最古の会社です。
一方、諸外国をみてみると、100年以上継続している会社は韓国では5社、中国では1000社という説もありますが、定かではありません。
これまで、日本の企業がいかに長く続いてきたかを示しています。 - 以前、「30年近くやってきて、社員にも退職金を払いたいし、社長自身も老後資金をある程度確保したいという状況で今、清算したらどのようになるのか」という相談がありました。
B/S上、資産が10億、負債が8億であっても、資産には死産が含まれますので評価はよくて6掛け、対する負債は100%評価です。この会社の場合はマイナス2億円になります。
つまり、清算する場合は、自宅を売却し、預金を借金の返済にあてて完済できればまだいい方だということです。やめたくても債務超過になっており、そのまま続けざるを得ない会社も随分あるのが現状です。 - では、どうしたら死産をつくらずに会社を清算できるでしょうか。その答えはテキストにもありますが、「事業の財産・債務と個人の財産・債務を分ける」、これが本日の結論の一つです。
どのように分けるかと申しますと、現在の会社を①事業会社②財産保有会社③社長個人の家に分けることです。これですっきりします。- 事業会社(本業を身軽にする)
具体的には不動産を切り離します。適格な会社分割を行えば、不動産取得税は免税になりますし、登録免許税も5分の1程度になります。事業会社は運転資金以外の大きな借金はせず、固定資産を財産管理会社に移転し、本業に専念します。これによってB/Sを身軽にします。 - 財産管理会社(事業会社の財産管理)
財産管理会社のポイントは同族会社とし、ファミリー以外はいれないことです。事業内容は、財産を貸し付け安定した家賃収入、地代を頂く。資金があれば不動産物件を買ってもいいと思います。個人で不動産を所有しないことです。理由は所得分散のためです。 - 社長個人の家(自宅と老後資金の確保)
社長個人はご自宅と老後資金を確保することに専念します。また、事業会社、財産管理会社の株式を保有します。これらの財産は後継者以外の親族に決して相続させてはなりません。
- 会社経営して行くためには資金が欠かせません。運転資金として銀行に融資の申し込みをすることがありますが、その時、銀行は何に注目するのでしょうか。
答えは、決算書の「損益(減価償却費を100%計上しているか、仮勘定を使用した粉飾がないか)」と「債務償還年数が10年以内か (長期借入金が、税引き後利益+減価償却費の10倍以内か)」を見ています。中小企業の債務償還年数の平均はTKCのBASTで調べますと19年です。中小企業の経営はほっといたら大変になることがお分かりになると思います。 - これだけは見て欲しいキャッシュフローがあります。それは、必要運転資金を知ることと、預金・借入金残高の照合です。
ここで必要運転資金の例をご説明します。月商が2.2億円として、売上を回収するのにかかっている期間が4.2カ月間、仕入れてから支払うまでの期間が1.1カ月の会社の場合、その差3.1カ月およそ100日分の運転資金が必要ということになります。
つまり、3.1カ月分×2.2億円=6.8億円 この金額に対応する短期借入金が必ずいることになります。またこの数字は、1日回収が伸びると約740万円の資金が不足することを意味しています。
数字が苦手な経営者の方は、これだけは守ってください。それは、銀行預金口座の残高と借入金残高を毎週末に必ずチェックすることです。借入金を除いて前週よりも銀行残高が増えていれば問題はありませんが、減っている場合は徹底的に原因を追及してください。前週だけでなく、期初とも比べて、同じように減っている原因を徹底的に追及することが必要です。 - 重要な経営数字を考えてみました。私は、経営とは飛行機を操縦しているようなものだと思います。地上を走る自動車と違い、飛行機はある一定以上の速さで高く飛ばないと、やがて失速し墜落してしまいます。経営も同じです。
飛行機の操縦席にはスピード計(固定費に対する粗利益の割合)、高度計(売上総利益に対する固定費の割合。年計表)、燃料計(資金ショート日数)、回転計(交差比率=在庫回転率×粗利益率)、水温計(借入金月商倍率) といった計器と、操縦かん(社長の経験や勘) があります。交差比率は300%以上を目指します。また、年計表は固定費から見てどのくらいの売上を確保しないといけないかが一目でわかりますので、大切です。 - 経営を続けていると税務調査を受けることもあります。
税務調査をスムーズに終結させたい社長には「書面添付制度」の活用がお奨めです。この制度を利用すると、まず書面を作成した税理士に対して疑問点の解明が行われます。そこで疑義解消すれば、税務調査は行われず、調査を行わない旨を原則文書で通知されます。
- 本日のもう一つの結論です。
100年以上永続する会社の条件は、①一人当たりの付加価値(売上)が1000万円以上、②一人当たりの経常利益が100万円以上、ここまでの条件ならクリアする企業はたくさんあります。さらに③一人当たりの純資産額が1000万円以上、という条件を満たす会社はほとんどありません。何故なら、②の条件を満たしても、税金を納めながら③の条件をクリアするためには20年以上かかるからです。
強い会社にするためには、納税をしてかつ蓄積することが重要になります。節税は大切ですが、「銭失いの節税」は100年永続経営を考えるとマイナスです。