11月、東京事務所に隣接する全国町村会館にて「100年永続企業をつくる社長の知恵袋」と題したセミナーを開催しました。
昨今の経済情勢を反映してか、当日は経営者の方を中心に会場はほぼ満席となり、盛況のうちに終えることが出来ました。
今回は当日お話した内容の一部をご紹介いたします。
- 100年続く会社をつくるためには、受け皿をしっかり作っていくことが必要です。
業績がいい時には税務署が、悪い時には銀行(の借入金)が重くのしかかって来ます。
そして倒産した場合は、自宅を手放さなければならないこともあります。このような最悪の事態を回避するためのヒントをお話しいたします。 - あるデータによると会社が生き残れる確率は、創業5年では全体の15%、10年では10%、30年では2%、50年では0.7%だそうです。
- 税収を見てみると、東京一極集中が過度に進んでいることがわかります。
日本には国税局が11カ所ありますが、東京・大阪・名古屋局で全体の74%を占めます。また、大阪で一番大きい税務署が11部門に対し、渋谷税務署は23部門あり、その税収は札幌国税局と同じ規模だということです。また麹町税務署は広島国税局と同規模で、その人員は300人足らずなのに対し、札幌国税局は2,500人いるそうです。 - 30年近くやってきて、社員にも退職金を払いたいし、社長自身も老後資金をある程度確保したいという状況で今、清算したらどのようになるのかという相談がありました。
B/S上では10億の資産があり、負債が8億であっても、資産評価はよくて6掛け、対して負債は100%評価になりますから、この会社の場合マイナス2億円となります。
つまり、清算する場合は、自宅を売却し、預金を借金の返済にあてて完済できればまだいい方だということです。やめたくても債務超過になっており、そのまま続けざるを得ない会社も随分あるのが現状です。 - 民主党の政策と中小企業への影響について簡単にポイントを指摘いたします。
マニュフェストには、中小企業向けの法人税率を18から11%に引き下げると書かれています。例をあげますと所得額が800万円の企業では56万円の減税となります。
また、融資関係の施策をみてみると、- 貸し渋り・貸し剥がし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる
- 政府系金融機関の中小企業に対する融資について、個人保証を撤廃する
- 自殺の主な要因ともなっている連帯保証人制度について廃止を含め、あり方を検討する。
特に連帯保証人の廃止に関しては、郵貯のプール資金を活用して第二保証会社を創設することが書かれています。
ちなみに、現在弁護士、司法書士が行っている消費者金融の利息問題はここ1~2年で解決し、今後は残業問題がクローズアップされるということのようです。 - 倒産=自己破産する原因は、事業財産・債務と個人財産・債務がミックスされており、社長個人が担保提供、個人保証を行っている状況でいざという時の備えができていないことにあります。
- ここで、100年永続企業への仕組みづくりをする必要があります。
それは現在の会社を「事業会社」「財産保有会社」「社長個人の家」に分けることです。 - 相続税は、欧米はなくす方向になっています。イギリスは今年・来年にも、カナダ・オーストラリア・シンガポールはありません。
日本はどうかといいますと、毎年100万人亡くなられるとして、約47,000人、つまり 4.7%の方が納税対象になっています。この数字を課税最低限を下げることで50万人にしようと考えています。しかし、それでは税務署員が対応できない。そこで遺産税を創設しようとする動きがあります。 - 二代目、三代目に対して、奥様が社長の愚痴を言っていると、親を尊敬しなくなり「親 は考えが古い」「親を超えてやる」といった考えを持つようになります。そしてそのような経営者はリーマンショックでダメージを受けているケースが多いのも事実です。
また、子供が3人いるところは事業承継がうまくいっています。それは誰かが必ず継ぐことになるからです。そして先祖を大切にする、仏壇に手を合わせる、これも事業承継が成功するポイントです。これは会計士が見た事実です。
言葉で言うと「元を忘れず 末を乱さず」です。 - 決算書で支店長や融資の担当者が見るポイントをご説明します。
- 損益計算書:社長が規模に見合う報酬をとっているかどうか。
減価償却費を100%計上しているか。
※なっていない場合は修正した損益計算書で格付けされ、融資の審査がされます。 - 貸借対照表:債務超過かどうか
- 税引き後利益+減価償却費が返済能力をみる元になります。(簡易キャッシュフロー計算)長期借入金がこの数字10倍以内かどうか
中小企業の債務償還年数の平均はTKCのBASTで調べますと、19年です。構造上、 中小企業の経営はほっといたら大変になることがお分かりになると思います。 - 少人数私募債の利用
銀行借り入れと違い、担保を必要としません。審査もなく機動的な資金調達が行えます。社債購入者は利息が20%の分離課税となるので高額所得者は税法上有利となります。
このような経済情況のもと、手続きが簡便な資金調達方法として、お勧めできるものです。 - キャッシュフロー経営で特にやってほしいことは、今現在の預金の残高、借入金の残高がすぐ言えるかどうか。また先週と比べて増えたか減ったか。これを必ず金曜日に確認してください。増えた場合は週末ゴルフに行って頂いて結構です。逆に減った場合は原因を報告させる、または自分で確かめることを励行して下さい。
これが潰れない会社の原点です。おかしくなっている会社は基本的な事が出来ていません。 - 税務調査について
- 税務行政が変わってきている
まず、白か黒かに分け、新書面添付(税務監査報告書)を出した場合は顧問税理士に意見聴取をし、それで疑義が解消されれば実地調査は省略されます。
これは、人員の減少により効率アップをはかり、国際課税やインターネットに力を入れたいという事情があるようです。 - 納得できない納税はしない
指摘事情は必ず文章でもらい、納得できることには○、納得できないことには×をつけ、△は会計事務所に交渉を依頼するというように色分けすることです。
- 事業承継のキーワード
- 一人当たりの付加価値 1,000万円以上
- 一人当たりの経常利益 100万円以上
- 一人当たりの純資産 1,000万円以上
3.を達成している会社は少ないと思います。なぜなら実効税率を簡略化のために50%とすると、2.で会社にのこる利益は1年に50万円です。とすると、ゼロからスタートして1,000万円になるには1,000万÷50万=20年かかることになるからです。
つまり、強い会社にするためには、納税をしてかつ蓄積することが重要になります。節税は大切ですが、「銭失いの節税」は100年永続経営を考えるとマイナスになります。 - まとめ
100年永続企業をつくるポイントは、所有と経営を分離し、事業会社、財産管理会社、社長個人の家に分けることであり、これが万が一の場合でも、家と老後資金は確保できるしくみなのです。
【顛末】
当日ご参加頂いた方のご感想を一部ご紹介いたします。
- 具体的な内容が多かったので、関心が持てた。(コンサルタント業・代表取締役)
- 内容が深かった。時間があればもっと聞きたかった。(サービス業・代表取締役)
- 内容が濃い、深い。講師の話し方が熱かった。(卸売業・代表取締役)
- 内容が具体的・現実的で、ポイントが明確だったのでよく理解できた。(サービス業・ 部長)
- 平易な表現で、税務の素人である私にも理解でき、実践に則した内容で大変参考になった。(専門サービス業・代表)